石の涙

     西脇たみ恵

 

雨で石が濡れている

石まで泣いているようだ

 

踏まれる事に慣れていても

石も辛かったのかもしれない

 

この石は何処で生まれたのだろう

もう二度と故郷に戻れない石

 

生まれた所から遠く離れて

黙ってそこにあるしかない

 

石は私以上に孤独で

私以上に寂しい

| 木曜会(編集委員) | 00:06 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
背伸びをやめた

        尾崎 杏子

 

姉のマニキュアや口紅を塗りたかった

ハイヒールも早く履きたかった

縞の着物が似合う女性に早くなりたかった

 

幼いころの背伸びの先には

夢 憧れ 希望が見えた

 

今 背伸びをして先にあるのは

別れ 不安 先細る暗い道が見えるばかり

 

だから遠くは見ないで

一日 一日をいとおしんで

今日を 今を精一杯

明るく 楽しくいきようと

背伸びはやめた

| 木曜会(編集委員) | 00:00 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
百七歳で旅立った父

         尾崎 杏子

 

やわらかい熟柿が好きだった父

庭の西条柿が古木になったので

百歳のころ 苗木を植えた

 

百七歳で旅立ったので

その柿は食べることはなかった

 

その柿が初めて実をつけたと

ふる里から届いた

 

にわかにふる里を思い出し

父を身近に感じた

 

ふる里の空の下で実った柿を

子供や孫たちに残して去った

父を思う日

 

      

| 木曜会(編集委員) | 00:06 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
何もできないけれど

               滝波万理子

 

豪雨だ

自然は年々狂暴になって

今回は ただならぬ雨量

 

郷里で一人暮らしの姉が気にかかる

郊外の木造一戸建て

すぐ側を小川が流れている

 

小川といえども 侮れない

過去には床下浸水があった

 

辺りに高い建物はなく

避難所も自宅より低い

自宅の二階に居るしかない姉に

 

時々携帯電話で様子を聞く

川は何とか頑張っているらしい

どうか溢れないでと祈るばかり

 

| 木曜会(編集委員) | 00:00 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
書道で腰痛

       宮中雲子

 

中腰での書道に熱が入りすぎ

招いた腰痛

 

背中が伸ばせない

腕がまわせない

呼吸でさえ痛みを引き起こす

 

展覧会が近づいているのに

出品に向けて

筆を持つことが出来ない

 

痛みに耐えながらの

不自由な生活

それほどまでにして

書道を続けなければならないのか

 

お休みしますの一言が

ラムネの玉のように

喉にある

 

| 木曜会(編集委員) | 00:05 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
霧の中で

         瀬野啓子

 

山深い宿に着いて ほっと一息

 

さっき迄

宿の窓から見えていた山の姿が

白い濃淡の霧に すっかり被われている

 

じっと見ていると

動くともなく流れている

 

私の持ち時間もこの様に

流れ去っているのか 不安

 

心も霧に閉じ込められ

音も無くゆっくり消える時間

 

人生の終りを重ねている

| 木曜会(編集委員) | 00:00 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
椅子の話

      西脇たみ恵

 

白い椅子が二つ

向き合って置いてあった

人が座ってないのに

対話をしているように見える

 

木漏れ日こぼれる

公園の木の下

物語の挿絵の中から

抜け出して来たような一対

 

耳を澄ませて

ゆっくりと傍らを過ぎる

人の話は聞く耳を持たないくせに

椅子の話が気にかかる

 

噂話にしては深刻に

相談ごとにしては和やかに

声なき物の話は睦まじい

椅子は 心で話している

| 木曜会(編集委員) | 00:05 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
親友が待っているのは・・・

           尾崎 杏子

 

故郷倉敷に大雨警報がでたので

親友にお見舞いの電話

 

隣町に避難指示が出ているけど

ここは大丈夫そうよと

話す声に不安はみじんもなかった

 

夕方になって「妹が音信不通なの」と

緊迫したメールがきた

驚き「吉報を待ってる」とだけ返信した

 

以来 親友からのメールはない

大変な状況をテレビで見ながら

落ち着かない 居ても立ってもいられない

 

親友が待っているのは私のメールじゃない

目の前のスマホに手を伸ばしては やめ

          伸ばしては やめ・・・・

| 木曜会(編集委員) | 00:00 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
銅の胡桃割り

      宮中雲子

 

あちこち緑青が浮き出している

銅の胡桃割り

いかにも年代物といいたいが

父の代からのもの

 

もっぱら銀杏割に用いていたが

胡桃をもらって

割ることに

 

銀杏の殻にくらべ

その殻の硬いこと

思いがけない力を要する

 

次世代への命を抱いているのは

銀杏も同じだが

他を拒む力は 

胡桃の方が遥かに強い

 

父が胡桃を割る姿を見たことはない

胡桃を割る本懐を

私の手でと 利き手に力を込める

| 木曜会(編集委員) | 00:05 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
吉備路をのんびりゆったり

                      尾崎 杏子

 

国分寺の五重の塔の回りに

古代米の赤い稲穂のさざ波が広がる吉備路

 

ぼんやり時を忘れていると

五重の塔が夕映えに染まりはじめ

空には夕月も

古(いにしえ)にタイムスリップしたかのよう

 

通りすぎるだけだった故郷

吉備路にのんびり ゆったり逗留したら

せかせかした都会のリズムを忘れ

まあるい心の私がいる

 

 

| 木曜会(編集委員) | 00:05 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
CALENDAR
S M T W T F S
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930 
<< November 2018 >>
SELECTED ENTRIES
CATEGORIES
ARCHIVES
RECENT COMMENT
LINKS