蝶の館

     西脇たみ恵

 

世界一美しい羽を

精一杯広げている蝶

永遠の生を

勝ち取ったかのように

 

なのに 微動だに出来ない

死は不動だ

 

蝶は愛されて

ここに展示されている

だが望まない愛ほど

迷惑な物は無い

 

生態と分布図

事細かに説明された

壁一面の 死の陳列

 

蝶よ受け取るな 

称賛も 黙祷も

| 木曜会(編集委員) | 00:12 | comments(0) | - | ↑TOP
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趣味は亡父と同じ

        瀬野啓子

 

音楽が趣味だった亡父(ちち)

 

右も左も解らない幼い私を連れて行った

コンサート

 

中学生 高校生時代は

次々入ってくる外国の音楽を

父と聞きに行った

 

父が亡くなって 父の趣味がすっかり

私の趣味だと気づいた

 

日々の生活を何かと楽しませてくれる音楽

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もう遅い

      宮中雲子

 

母が切望して

晩年 やっと手に入れた大島紬

 

どんな時に着ていたのか

東京に出てしまった私に

確かな記憶はないが・・・

 

亡くなった時は

タンスに大切にしまわれていた

 

和服を嗜まない私は

着物音痴

帰省した折

防虫剤を入れてくるのが精一杯

 

亡くなって三十年

母の柩に入れてあげればよかったと

今にして思う

| 木曜会(編集委員) | 00:12 | comments(0) | - | ↑TOP
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可愛い猫

      西脇たみ恵

 

誰かを愛すると言う事は

優しさに寄り添う事

優しさに甘えたり

優しさに寄り掛かったりしない

 

だが 可愛い猫が

すり寄って来る

甘えるなと突き放すには

余りにも愛しい

 

独りよがりで 身勝手で

傲慢で 気まぐれで

嫌いな所を上げ連ねても

愛しさに勝てない

 

黙って愛して

心ゆくまで愛して

・・・・・・・・・・・・・と

愛に施しを求めて来る 

| 木曜会(編集委員) | 00:06 | comments(0) | - | ↑TOP
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山茶花の咲く庭

        瀬野啓子

 

花が少なくなった冬枯れの庭に

純白で 八重咲の花は 灯火のよう

 

四十年もの間 変ることなく

家人の心に優しく寄り添って

咲き続けている 掛替えのない木

 

人は 老いて行くのに

ます ます 生き生きと華やか

 

毎朝 窓を開け

‟おはよう‟と声をかけて

私の一日が始まる

 

| 木曜会(編集委員) | 00:05 | comments(0) | - | ↑TOP
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ああ気になる

        滝波万理子

 

友人の旧姓が思い出せない

少女の頃からの付き合いなのに

結婚後の今の名字しか出てこない

 

頭文字 漢字の姿 呼んでいた雰囲気

意識を集中して過去を探っても

影も形も見つからない 

 

ふっと あの人は誰さんだったかなと

思ってみたばっかりに

なにか落ち着かない気分になった

そのうちじゃなく 今思い出したい

 

| 木曜会(編集委員) | 00:03 | comments(0) | - | ↑TOP
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朝一番の笑い

        尾崎 杏子

 

90歳を前に

走れなくなった

覚えられなくなった

本も読めなくなったと

出来なくなったことばかり数える

ラジオ体操仲間の友人

 

出し殻が歩いているようでしょう

いえいえ 若い時にはなかったいい味がでていますよ

そうかしら 出涸らしと思っていたけど

まだ少しは旨味が残っているかしら

 

帰る道すがら

たわいない 朝一番の笑いが

風に乗って 公園の木々の間に

消えていく

 

| 木曜会(編集委員) | 00:03 | comments(0) | - | ↑TOP
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旅する手紙

      渡辺恵美子

 

お元気ですか?で

始めます

遠くに越した友だちに

会いたい気持ちを手紙にたくす

旅する手紙が

私の心を届けます

 

とっても元気 と

続けます

なかなか会えない友だちに

来年は必ず会おうね と

旅する手紙が

私の心を乗せていく

 

本当は

ちーさく ちーさく ちーさくなって

私も封筒に入りたい

| 木曜会(編集委員) | 00:01 | comments(0) | - | ↑TOP
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辛口の鏡

      西脇たみ恵

 

朝 顔を洗う

今日の自分と対面

いったい何処の老女だろう?

 

昨日と大差ない日々が続いて

ちっとも気が付かなかった

ちりも積もれば山となり

乙女も日々に逆らえない

 

いつも自分に向き合えと

洗面所の鏡

辛口の鏡

 

今日する事を明日に延ばしても

その時は延ばせない

やがて来る私の終焉が

きっかりと 今日の分を詰めて来る

| 木曜会(編集委員) | 00:05 | comments(0) | - | ↑TOP
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イルミネーションの中で

           中尾寿満子

 

中央商店会

イルミネーション 点灯式

 

ぼくのて グッパー

わたしのて グッパー

ぐーっとのばそう おおぞらへ

ゆめが きっとつかめるよ

 

幼稚園児達の歌声の中

次々と灯った 灯り

夜空に吸い込まれていく 拍手と歓声

 

子供たち三人が卒園した幼稚園

三年前 創立百年記念歌制定の際

作詩した私

心の中で一緒に歌いながら

いつか 涙 ぬぐっていた

| 木曜会(編集委員) | 00:03 | comments(0) | - | ↑TOP
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