冬に咲く

     西脇たみ恵

 

土手に水仙が咲いている

寒さを感じないのだろうか

すっきりと立ちあがって

僅かな冬の陽を捕まえている

 

誰かを思って佇んでいるようには見えない

誰かに阿る(おもねる)気配もない

そう 水仙は自分だけを見ていた

ナルシスのごとく

 

別名は雪中花

寒さは身の(うち)にある者らしい

 

冬咲く花は

みんないじらしく見える

耐えるのに必死な冬

それでも咲く健気さに

強さより優しさが漂う

| 木曜会(編集委員) | 00:05 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
縁起の悪い旅をハッピーエンドに

                                     尾崎 杏子

 

北海道旅行に出発の朝

使い込んで小さくなった庖丁の刃が

パキッとおれた

何という不吉な旅の始まりか

 

やっぱり不運が待っていた

スマホのカメラ機能が

飛行機の中でダウン

北海道の写真は一枚もない

 

撮ることに心を奪われることなく

しっかり観ることに専念できたので

心のフィルムに濃く焼き付けて

ハッピーエンドで締めくくった

| 木曜会(編集委員) | 00:00 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
秋です

     瀬野啓子

 

林の中は秋たけなわ

 

真っ赤や黄色に色付いた木の葉

早々と散り落ちた枯れ葉

 

詩を拾おうとして入った森

簡単に見つけることは出来ない詩の種

拾ったのは木の実だけ

 

木漏れ日に手をかざし

足元の落ち葉や木の実に

心を向けて歩いて行く

 

二度と出合う事はない人達と

笑顔で交わす挨拶

 

森の香りを胸一杯に

秋の中に溶け込む

 

 

| 木曜会(編集委員) | 00:00 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
キリンの睡眠

      西脇たみ恵

 

キリンはいつも睡眠不足

あの大きな体で

一日の睡眠は20

もっと眠りたいと

思ったこともあっただろうに

 

つぶらだけれど

眠いような目が忘れられない

身を守るために絶えず警戒して

睡眠は浅く 時間も短く

 

総じて草食動物は睡眠が少ない

キリンは筆頭

身を削ってまで得た睡眠にも

心行くまで身を委ねることもなく

 

それでもキリンは

文句を言わない

| 木曜会(編集委員) | 00:04 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
鬩(せめ)ぎ合う

        宮中雲子

 

半紙から半切へ

それだけでも

私にはとてつもないことに思えたのに

 

先生は事も無げに

次は二・六をと・・・

幅五十三センチ

長さ二メートル七十五センチ

幟旗のような和紙を広げて

その大きさにたじろぐ

 

この先 なお

どれほどの課題が待ち受けているのか

限りなく続く書道の世界に

挑戦への意欲と

逃げ出したい気持ちが

鬩ぎ合う 

| 木曜会(編集委員) | 00:00 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
穴の向こうに何が

           尾崎 杏子

 

穴ってふしぎに興味をそそる

 

在ることは分かっていても

捕らえることができなかった宇宙の穴

ブラックホール

 

何か国も協力しあって やっと

世界で初めてブラックホールを

捕らえることができたという

 

何でも吸い込んでしまうブラックホール

穴の向こうにどんな世界が広がっているのか

こわいけど覗いてみたい宇宙の穴

| 木曜会(編集委員) | 00:05 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
眩暈の果て

      西脇たみ恵

 

ぐらり

自分への不信を

掻き立てる 眩暈(めまい)

 

揺らぐな 倒れるな

支えはいらないと

強がってもいられなくて

見知らぬ電柱に捉まる

 

物言わぬ電柱の頼もしきを

思わず感謝する

電線を地下に埋めたら

この先 誰に(すが)ろう

 

電柱に縋って残っていた

汚れた名残の雪を思い出す

雪さえ綺麗では終われない

哀れを誘った雪は さながらわが身だ

| 木曜会(編集委員) | 00:00 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
なめんなヨ!

       渡辺恵美子

 

大型台風が来ると知っていたのに

窓を開け放して寝てしまった

 

夜半に大きな音と風におこされ

隣室をのぞいたら

小さい机がたおれ 床は水びたし

 

「なめんなヨ!」と

台風が私に向かって

どなりちらしながら 

去っていったようだ

| 木曜会(編集委員) | 00:05 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
寝顔は穏やか

      宮中雲子

 

家族を次々見送り

九十歳を越えて

病院のベッドで眠り続ける叔母

 

見舞いに行って 傍らにいても

たまに薄目を開けるだけ

不思議なものを見る目つきで

私を見て

少し微笑み また眠る

 

煩悩から解き放たれ

平安の世界に

身を委ねているのか

その寝顔は穏やか

| 木曜会(編集委員) | 00:00 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
亡父からの贈りもの

            尾崎 杏子

 

亡父が植えた柿の木が

初めて実をつけたからと

故郷からの送りもの

 

渋柿なのでまだ堅く蒼い

干し柿にと皮をむきながら

父の姿が甦り

思いは秋の故郷にとんでいる

 

 熟柿が好きだった父が

 じゅくじゅくに熟れた柿を

 おいしそうに

 スプーンですくって食べていた

夕陽を吸い込んだような柿の色

 

そこにはもう父も母もいない

ふる里の秋 ふる里の秋

豊かな秋は浮かぶけれど・・・・

| 木曜会(編集委員) | 00:04 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
CALENDAR
S M T W T F S
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
<< November 2019 >>
SELECTED ENTRIES
CATEGORIES
ARCHIVES
RECENT COMMENT
LINKS