亡父からの贈りもの

            尾崎 杏子

 

亡父が植えた柿の木が

初めて実をつけたからと

故郷からの送りもの

 

渋柿なのでまだ堅く蒼い

干し柿にと皮をむきながら

父の姿が甦り

思いは秋の故郷にとんでいる

 

 熟柿が好きだった父が

 じゅくじゅくに熟れた柿を

 おいしそうに

 スプーンですくって食べていた

夕陽を吸い込んだような柿の色

 

そこにはもう父も母もいない

ふる里の秋 ふる里の秋

豊かな秋は浮かぶけれど・・・・

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消しゴムが一つ

       西脇たみ恵

 

丸くうす汚れた消しゴム

几帳面な角も

眩しい白も 

跡形がない

 

間違った事を

(ただ)したにしては

なんと情けない顔だろう

糺した事を後悔しているようだ

 

私の迷いで

汚れた顔

私の傍らで

私の真理を見届けようと侍る

 

心の(ひずみ)を一身に請け負った

私の迷いの 連れあい

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記憶の中の道

      西脇たみ恵

 

母と一緒に歩くだけで

楽しかった子供の頃

体の奥から喜びが溢れて

スキップをしながら母に(まと)わりついた

 

転ぶよと言われても

右へ左へ前へ後ろへ

母の周りを独り占めした

叱る母の声さえどこか甘くて

 

故郷には もう

母も 母と歩いた道もない

母は亡くなり

道は開発に下敷にされて消えた

 

思い出の中だけに存在する道

けれど 時と共にに風化しない道

そこにはいつも 母がいて

そこにはいつも 私がいる

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図録との別れ

        瀬野啓子

 

長い間 絵画展を見るたびに

買って来た図録たち

 

溜りに溜って 手に負えない

整理を始めたが

もともと 好きな作者の本

つい開いている

 

時が過ぎるのも忘れ 絵の中に引き込まれ

中々 選別出来ない

 

手放すのが惜しくなり

片付けているのか 散らかしているのか

部屋中 図録だらけ

 

明日こそは!と思う日が

何日続いていることか

どんな別れも 別れは淋しい

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文鎮の裸婦

       宮中雲子

 

書道に向かう度

広げた紙を留めて横たわる

文鎮の裸婦

 

ひとつの点を打っては

首をひねり

一本の線を引いては

今いちと溜息をつき

苦悩する私におかまいなく

胸から腰を艶やかにくねらせ

気楽なポーズ

 

モデルの女性は

その製作過程に於いて

画家の注文に応え

耐えながら

ポーズをとっていたのだろうが

 

提出期限が迫り

満足出来ない一枚に

いらだつ私の目の前で

何の憂いもなさそうに横たわっている

文鎮の裸婦

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眠れない夜

       尾崎 杏子

 

眠りに入る前 目を閉じると

涼風にのって 運ばれてくる虫の声

 

こんなに心地よい

平穏な一時が ここには在る

 

地球の気象が荒々しく変わり

地震 竜巻 大雨 山の崩壊 川の氾濫

幾つもの災害に 立て続けに襲われた地に

心安らぐ一時など 在ろうはずもない

 

不公平な自然災害

とりとめもない事が

虫の声とともに

夢の世界の入り口を 入ったり出たり・・・

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孫に言われて

         尾崎 杏子

 

孫が遊びに来て

去年買ってもらった

ピストル型のシャボンダマをしたいという

買ったことすら忘れていて

どこにしまったか覚えていない

 

有りそうな所を探してみたが見当たらない

すると孫が

探すときには 無さそうな所も探すと

見つかるんだよと言う

 

液体を二階にしまわないだろうと思った

  • ・・が二階でみつけた

孫に教わるようになったかと

急に老いを感じた

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気が緩んだら

        滝波万理子

 

納豆とビールを止められている夫が

入院中だ 

でも明後日帰って来る

今のうちにと私一人で

納豆を肴にビールで くつろぐ

 

輸血だ再手術だと

随分心配したくせに

もう安心と気が緩むと

薄情になる

 

夫が留守だと気楽だ

悪いけど

あと二・三日入院してればいいのにと

罰当たりなことを考える

 

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ルリシジミの午後

        西脇たみ恵

 

水色のシジミ蝶

ふら ふらり

迷いが 花になったよう

花の切れた植え込みに

揺れる水色 ふらり ふらふら

 

何処に行きたいのやら

同じ所を 行ったり来たり

あてどなく彷徨(さまよ)

 

来た道は後悔にまみれ

行く道は不安に彩られる

 

小さな小さな ルリシジミ

道を見つけられない迷子の蝶々

揺らぐ姿が妙に切ない

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なんだか変

       渡辺恵美子

 

興福寺で出会ったイケメンの坊さん

なんと青い眼

流暢な日本語で

日本人の観光客に説明してる

 

少し離れた所では

日本人の坊さんが

外国人に英語で説明してる

 

古都(こと)奈良での

まか不思議な体験

(ほとけ)(さま)

さぞ驚いているだろう・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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