鏡のなかの私と対面

         宮中雲子

 

洗面台の前の大きな鏡の中で

毎朝 私と対面

 

目を大きく開いて

口許に浮かべる微笑み

「おはよう」

 

今日の私の体調を映し出し

返してくれる

「おはよう」

 

窪みを深くする

額や眼尻の皺も

日々見ていると

驚くほどのことはなく

生きている私を

あるがままに写し出す

| 木曜会(編集委員) | 00:05 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
書けなくなった

            渡辺恵美子

 

ある日 突然に思った

こんな詩 読んでも面白くない

感動もしない

 

書いても書いても

自分の詩に納得できなくて

書けなくなった

 

第三者の目になった私の評価が

あまりにも厳しくて

| 木曜会(編集委員) | 00:00 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
鬼の居ぬまに・・・

            渡辺恵美子

 

鬼の居ぬ間に・・・の鬼は?

小言をならべる母

気難しい父

注文の多い夫

 

鬼の居ぬ間に

あれも やりたい

これも やりたい と空想しては

その日を心待ちにしている のに・・・

 

いざ その時が来ると

ホッとして

心が緩んで

ゴロンと寝ころんで

昼寝なんかしてしまう

| 木曜会(編集委員) | 00:05 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
お墓のローリエ

        宮中雲子

 

サトウハチロー先生のお墓の

左右に植えてあるローリエ

詩人の栄誉を讃えて

緑濃い葉で形作っている円錐形

 

墓参りのたび

気ままに伸びた枝先を切って

形を整える

 

料理用に持ち帰った葉は

乾かして

ピクルスやシチューに役立てているが

蓄えた葉に 私の料理は追いつかず

溜まるばかりのローリエ

 

でも 詩人として

あやかりたいと

今日も持ち帰るローリエ

| 木曜会(編集委員) | 00:04 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
秋は萩

          瀬野啓子

 

紅紫や白い萩の花が ゆっくり

秋を招いている

 

弱々しげに

優しく(なび)く萩に近寄ると

思い掛け無く しっかりした枝振り

 

枝一杯に 花を咲かせ

優雅な佇まい

 

通り過ぎる人々に優しく

お辞儀をしているように弾む

| 木曜会(編集委員) | 00:00 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
苦しい一夜

      西脇たみ恵

 

古い民家に泊った

闇そのものが息を殺しているような

そんな夜を迎えた

 

足音を消して

鬼の子が近付いてくる

気配だけが一杯になった部屋

 

臆病な自分に

追い詰められる

苦しい夜

 

白々と夜が明け始めた頃

眠りに落ちた

朝寝坊した私に宿の主が言った

又 ゆっくり休みに来て下さいと

| 木曜会(編集委員) | 00:05 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
日が落ちて

     宮田滋子

 

野面(のづら)から 人影が消え

ローカル電車が

帰宅を急ぐ人々を乗せて 遠ざかる

 

茜色の西空には

ねぐらに帰る鳥たちのシルエット

見上げていると

“お先に”の声が 聞こえるような・・・

 

暮れなずむ空

鳥たちの後姿が

ENDマークのように 静かに

今日の終わりを告げる

| 木曜会(編集委員) | 00:04 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
今日も無事に

          滝波万理子

 

家の外は危険がいっぱい

躓く道路の段差

歩道をビュンビュン走る自転車

青信号の横断歩道に突っ込む車

静かな道ならひったくり

 

家の中も危険がいっぱい

躓く部屋と廊下の段差

歩くとぶち当たる段ボール箱

滑る風呂場

受話器をとれば詐欺師

 

ゲームのように

これ等をかわして

今日も何とか無事

 

| 木曜会(編集委員) | 00:00 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
向こうさまだって

           瀬野啓子

 

爬虫類は 

テレビで見るのもゾッとする

夏は庭に出ると

本物の蜥蜴や守宮が チョロチョロ

 

時には 守宮が 

お風呂場の

ガラス窓に張りついていると

飛び上がってしまう

 

その度に大きな悲鳴をあげて騒ぐと

夫は“向こうさまだって怖がってるよ”と

一笑に付されてしまう

| 木曜会(編集委員) | 01:12 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
一編の詩に

     西脇たみ恵

 

想いを編む

一編の詩になるように

心をこぼさないように

 

悲しい詩を 編む

寂しい詩を 編む

知らない人の涙まで

汲み取るように

 

過去を 編む

疼いて消えない古傷も

獣のように舐めていたら

いつか癒えるだろう

| 木曜会(編集委員) | 01:11 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
CALENDAR
S M T W T F S
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031    
<< October 2017 >>
SELECTED ENTRIES
CATEGORIES
ARCHIVES
RECENT COMMENT
LINKS