玉蔵院一景

      西脇たみ恵

 

かすかな風に揺れる枝

ふわりと 舞い降りた春が

自身に酔いしれるように

桜を揺らす

 

寺には 早咲きの

枝垂れ桜一本

溜息さえ桜色になりそうな一景

 

カメラを構え 携帯をかざし

春を切り取る

 

見知らぬ人と自慢げに見せ合う

一本の桜は

それぞれの画面で増幅し 

春爛漫

 

桜が取り持つ縁で

心まで春めく

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どの花が好き?

                  瀬野啓子

 

庭に 次々開花する つつじの花

その花々に彩りを添えるように

どこからか飛んで来た 紋黄蝶一羽

ヒラ ヒラ ヒラ ヒラ

優雅に舞っている

 

どの花に止まるのか 気になるが

止まりそうで 止まらない蝶

勿体振って 焦らすように

舞い続けている

 

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女いらず

       渡辺恵美子

 

料理の苦手な私の強力助っ人

電気圧力鍋

 

レシピブックを見ながら

材料を整え調味料を加えて

時間をセットするだけ

失敗なし

女いらず とネーミングしたいくらい

 

独身男性は

ますます増えそうだ

料理上手が女の武器の時代は

遠くなりにけり である

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盆栽の松

      尾崎 杏子

 

どっしりとした陶器の鉢に植えられて

負傷者のように添木され

針金で無理やり歪められて

虐待されているような光景の盆栽だった

 

耐え抜いた 今では

威厳を漂わせているけれど・・・・

 

美しい姿の陰に

辛い矯正を強いられた

積年の怨みを

どこかに宿していないだろうか

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故郷と親はセット

         尾崎 杏子

 

疲れたとき 寂しいとき

心を温めてくれた故郷

 

それは永遠のものと思っていた

 

母が亡くなり それでも

一人になった父を思い

足繁く帰った

 

続いて父も亡くなり 何年もすぎ―――

親のいない故郷は

遠く よけいに寂しい

 

もはや故郷は甘えるところでも

温もりを求めるところでもなくなった

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話だけお墓に

       宮中雲子

 

久しぶりに

サンフランシスコから里帰りした孝子と

サトウハチロー先生の墓参り

 

乗ってきた

都電荒川線が走り去った後に

孝子が見つけたつくし

線路の仕切り毎

一面にはびこっている

 

摘みたいね

でも

線路内立入り禁止の札に阻まれ

 

長く日本を離れている孝子ゆえ

いち早く

目で捉えたつくし

 

話だけ

お墓に届けることにする

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花に似合わず

       瀬野啓子

 

春の日差しの中

庭の一隅を埋め尽くして

咲いていた韮の花

 

ほんの少し 紫がかった

白い 小さな六枚の花びら

 

可憐な花に魅了され 何年も手を掛けず

咲かせていた付けが回ってきた

 

整理するため 掘り起こすと

根が蔓延(はびこ)って 手に負えない

 

頑固さや (ひた)向きさや 粘り強さで

刃向かってっくることを思い知らされた

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別れが来る

       西脇たみ恵

 

もしも 別れが来なければ

運命だと誤解したかもしれない

 

別れが来る

誤解を解きに

出合いの数だけきっちりと

数え間違えはしない

 

黙って別れた時もあった

泣いて泣いて

別れた事もあった

 

どんなに別れても

上手になれない

別れ下手のまま

人生の終わりにも悔いが残りそう

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一歳のこだわり

        渡辺恵美子

 

区役所に電話した時

‟失礼ですが お年は?‟と聞かれ

思わず

‟七十二歳‟と答えてしまった

今年七十二歳になるのだと

そればかり考えていたせいだ

 

すぐに

‟間違えました。七十一歳です‟と

言いなおしたら

電話の向こうで

‟クスッ‟と笑う声

 

他人(よそ)(さま)にとっては

七十一も七十二も大して変わらない

こだわっているのは

本人だけ

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命の元

     瀬野啓子

 

最近夫は 私のことを

‟ボクの命‟だと言う

 

風邪を引かないように

怪我をしないようにと 気を使っている

 

とは言っても

甘い夫婦の話ではない

 

目玉焼一つ出来ない人だから

私が先に居なくなることは困る

生きて行くための 命の元だから・・・

 

夫としては冗談ではなく

切実な問題だと

年老いた今 気が付いたらしい

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