桜の花の切手

       宮中雲子

 

桜の花の切手

時に乗り遅れて

一年間 切手帖で眠っていた

 

桜の開花予想が

しきりになってきて

季節を先取りしようと

手紙を書いては貼る切手

 

桜の莟は

まだ固いけれど

貼るたび 花見を待つ気持ちが

心の中でざわめく

 

手紙を受け取った人も

きっと 花見の楽しさを思い浮かべて

微笑んでくれることだろう

| 木曜会(編集委員) | 00:00 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
久しぶりの浅草

           渡辺恵美子

 

オレンジ通りの四つ角

見上げた屋根の上から

人形の鼠小僧次郎吉が

小判をまいている

手を差し出してしまいそう

 

伝法院通りの入り口では

弁天小僧が振袖姿で見えを切り

出迎え

 

浅草寺の大きな赤ちょうちん

人力車を引くハッピ姿のお兄さん

振袖姿のお嬢さんたち

 

久しぶりに

浅草ならではの光景に出合って

知らぬまに溶け込んで・・・

| 木曜会(編集委員) | 00:56 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
遠くなっていく想い出

          尾崎 杏子

 

施設に入っている

八十歳半ばの姉

 

ボーイフレンドとあちこち旅をしたときの

想い出の写真が沢山あった

 

入居時に 身軽に新しい生活をと

全てを処分したけど

残しておけばよかったと

つくづくいう

 

想い出は遠くなるばかり

写真でも見れば

遠くなった想い出を

引き寄せる事ができるのにと・・・・

| 木曜会(編集委員) | 23:51 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
小さな春を待つ

        瀬野啓子

 

近くの 小さな梅林は散歩道

 

今は冬枯れ

枯れ葉と 枯れ草が積もり 侘しい

 

それでも

木々達は 新しい春を抱えて

開花する(とき)に 備えているのだろう

 

見えない所で育っている

春への思いが 伝わってくる

 

少し はにかみながら

甘い香りで 誘ってくれる

開花の日が 待ち遠しい

| 木曜会(編集委員) | 00:00 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
奈良 秋篠寺に再び

         尾崎 杏子

 

高校時代の仲良し三人組で

秋篠寺を訪れたのは五十代

これからが我が青春という気分だった

 

女性の仏さま 伎芸天

優しい ふくよかなお顔は

とても若々しさが記憶にある

数少ない伎芸天は 芸能 芸術の仏さま

良い作品が書けますようにと

あの時も お祈りしたっけ

 

ふたたび訪れて お目にかかると

失礼ながら 艶やかさが少し失せ

どことなくお年を召されたような・・・

老いの眼をとうして見るからかしら──

| 木曜会(編集委員) | 00:04 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
続ける才能

      渡辺恵美子

 

いろいろな事情で

木曜会をやめて行く人たち

言うに言われぬ事情があるにせよ

継続できなかった人たち

 

大して才能が無い と謙遜する

有名な老役者

続ける才能だけは あったみたい と

胸をはる

 

続けたから

どうなるというものでもないけれど

やめれば それで終り

続ける才能ぐらいは

維持してゆきたい

| 木曜会(編集委員) | 00:00 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
悲しい再会

         渡辺恵美子

 

新聞の死亡欄

その小さな記事の中に

初恋の人の名前を見つけた

同姓同名と思ったが

年齢も出身大学も合っている

 

短期間のつきあいだったけれど

濃密な時をすごした

その頃から

脚本家になりたいと熱く語っていた

彼はその夢を見事に果して・・・

パソコンで調べたら

沢山の作品が並んでいた

 

いつか

会いたいと思っていたけれど

あまりにも悲しい再会だった

| 木曜会(編集委員) | 00:05 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
愛してきた風景は・・・

          宮中雲子

 

窓の向こうに

パステルカラーのピンクを広げる朝やけ

モネの絵のようと

愛してきた この風景

 

すぐ隣に十階建てビルの建設予定

もう見られなくなる この風景

 

すでに見馴れた家々は壊され

大半は更地になって

 

ここに居を定めて三十余年

老後 眺めるはずだった風景は・・・ 

| 木曜会(編集委員) | 00:00 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
蝶の館

     西脇たみ恵

 

世界一美しい羽を

精一杯広げている蝶

永遠の生を

勝ち取ったかのように

 

なのに 微動だに出来ない

死は不動だ

 

蝶は愛されて

ここに展示されている

だが望まない愛ほど

迷惑な物は無い

 

生態と分布図

事細かに説明された

壁一面の 死の陳列

 

蝶よ受け取るな 

称賛も 黙祷も

| 木曜会(編集委員) | 00:12 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
趣味は亡父と同じ

        瀬野啓子

 

音楽が趣味だった亡父(ちち)

 

右も左も解らない幼い私を連れて行った

コンサート

 

中学生 高校生時代は

次々入ってくる外国の音楽を

父と聞きに行った

 

父が亡くなって 父の趣味がすっかり

私の趣味だと気づいた

 

日々の生活を何かと楽しませてくれる音楽

| 木曜会(編集委員) | 00:00 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
CALENDAR
S M T W T F S
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31      
<< March 2019 >>
SELECTED ENTRIES
CATEGORIES
ARCHIVES
RECENT COMMENT
LINKS