野生動物の世界

           西脇たみ恵

 

テレビで映し出されたのは

足の悪い子象だった

母親やまわりの象達が守っていた

 

戦いに明け暮れるジャングルで

足の悪い子象は

いったい何年生きられるのだろう

 

野性の世界では

強くなければ生きのびられない

厳しい掟がある

 

病気も怪我も老いも

死に直結している

野生動物の潔さは

淘汰された者だけに与えられた勲章

 

 

| 木曜会(編集委員) | 15:25 | comments(0) | - | ↑TOP
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今も心の中で・・・

         瀬野啓子

 

近所の植木屋さんの

広大な庭には多種類の植物があった

 

四季折々に咲く花が

道行く人々を楽しませていた

 

そこを通る時は

足を止めて花に語りかけたり

香りを楽しんだりカメラを向けたり…

 

その庭園が急に相続税の問題とかで更地になり

次々に家が建築中

 

四十年もの長い年月親しんで来た

植物達が消えてしまった

 

目を閉じると赤 うす桃色 黄色 白…と

優しく開いた花々が

淋しい表情をして浮かんでくる

| 木曜会(編集委員) | 14:56 | comments(0) | - | ↑TOP
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芽がでない

      尾崎 杏子

 

ヒトツバタゴ(別名なんじゃもんじゃ)

胡桃 エゴ 椎のみなど 拾ってきては

発芽させて楽しんでいる

植物の好きな友人

 

接ぎ木と挿し木でしか殖やせない“そめいよしの”も

たまに実生で種から発芽することを知って・・・

 

毎年 10個は種を植えているのに

一向に芽がでない

こんなに情熱を注いでいるのにと

嘆きながら話す

 

何十年 詩を書き続けても芽が出ないわたし

芽が出ない苦労話は

私のことのように 心がチクチクする

 

| 木曜会(編集委員) | 21:23 | comments(0) | - | ↑TOP
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烏の会談

     西脇たみ恵

 

烏が鳴く

一羽が鳴くと呼応したように

それは鳴くというより

声高な会談

 

何か宜しくない事を

進めているような 

 

いつも通っている道なのに

烏が怖くて通れない

思わず遠まわりをして帰る

 

烏の知能は年々向上し

記憶力もいいと聞く

烏に譲った道

道だけで済めばいいが

 

ゾワリ 不気味な恐怖が

肌をなぜてきた

| 木曜会(編集委員) | 20:30 | comments(0) | - | ↑TOP
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男前豆腐

      渡辺恵美子

 

豆腐を買って来て と頼まれて

スーパーの豆腐売り場に直行

 

いろんな豆腐が並んでいて

迷ったけれど

‟男前豆腐‟を買った

 

他の豆腐とどこが違うのか?

その心意気が男前 とある

水もしたたるいいトーフ とも

 

かあさんが喜びそうだ

それが一番の理由で

男前豆腐を選んだ

| 木曜会(編集委員) | 23:45 | comments(0) | - | ↑TOP
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掴み損ねたままで

          滝波万理子

 

遊歩道の真ん中に

プラタナスの枯葉 一枚

乾いて 筋張って曲がって 

老人の手のよう

 

思いどおりに動かない年老いた手

何かを掴みかけて

逃げられてしまった

そんな形して

 

掴み損ねたものは何だったのか

残念そうに

ふるふる ふるえて

 

| 木曜会(編集委員) | 23:22 | comments(0) | - | ↑TOP
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宙に浮いた本

      尾崎杏子

 

高齢者の仲間うちで 本を回し読み

読んでは次の人に回していく

 

本を読むのもめっきり遅くなり

時間も 日にちもどんどん過ぎていく

記憶もどんどん薄れていく

 

誰から借りたか

誰に回せばいいのか

持ち主さえ現れない

 

何もかも分からなくなって

宙に浮いてしまった本

| 木曜会(編集委員) | 16:54 | comments(0) | - | ↑TOP
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母が残した指輪

       宮中雲子

 

母が亡くなって三十余年

タンスの引き出しで見つけた

細い金の指輪

 

母のもののようだが

指にはめているのを

ついぞ 見たことがない

 

父からもらったものの

結婚できなかった母は

身に付けることをためらったのか

 

小さな箱の中に

ずっと潜んでいた指輪

 

| 木曜会(編集委員) | 18:25 | comments(0) | - | ↑TOP
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夜の家

      西脇たみ恵

 

沼のほとりに一軒の家が建っていた

夜は一つの心象風景のように

侘しく佇んでいた

 

灯の消えた家

誰かを待っているのかもしれないのに

そこには闇が幽閉されていて

近づく者を拒絶していた

 

近道に選んだ道は

暗がり多くて

時間と恐怖を秤に賭けたことを

後悔させる

 

昼見れば情緒にあふれる家も

夜は別の顔がある

触れてはいけない顔

ぎゅっと目を閉じても家が私を見ている

| 木曜会(編集委員) | 12:02 | comments(0) | - | ↑TOP
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宿の名前は”海峡”

         瀬野啓子

 

以前 宿泊した

下北半島の牾ざ爐噺世ξ拘

 

そこは ある作家が

牾ざ爐搬蠅靴疹説を書いたと

その時の様子を語ってくれた宿の御主人

 

暖かい人柄に引かれて

夜更けまで付き合ってしまった

 

心の中に深く残っているひと夜

 

懐かしく暖かく

少し悲しい宿牾ざ燹

| 木曜会(編集委員) | 11:01 | comments(0) | - | ↑TOP
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