北の星空観賞

        尾崎 杏子

 

夜の摩周湖の展望台で「北の星空観賞」

摩周湖の湖面にも星空が映って・・・・

 

忘れかけていた天の川が

北から南へ横たわっている 頭上にも 足下にも

子供のころにはいつでもあった天の川

 

星の大きさにも 星の数にも驚くばかり

標高が五百五十メートルと高いせいも

周囲が暗いせいも

空気が澄んでいるせいも

幾つもの幸運が重なってのことだろう

 

昔見た星空が

今も北の空には かわらずある

| 木曜会(編集委員) | 00:05 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
この上ないおいしさ

         宮中雲子

 

台所の(かまど)の上に行平鍋

蓋をとると白粥

それが離乳期を迎えた

従弟のものとわかっていたが

 

戦争末期 薩摩芋ばかりで

白米の御飯など久しく食べていなかった

小学二年の私

 

一匙だけ

もう一口

ほどよくさめた白粥は

この世のものとも思えないおいしさ

 

半分くらい食べたところで

もうだめと自制

 

疎開中の実家で出産した叔母も

私の母も 私を咎めることはなく

それがかえって 罪の意識を強くした

 

後にも先にも

これほどおいしく思えた(ためし)のない白粥

ちょっとした罪悪感と共に

今も私の心に

| 木曜会(編集委員) | 00:00 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
告白の椅子

       西脇たみ恵

 

懐かしさで訪ねた喫茶店

思い出のまつわる椅子が

風化するのを避けるように

あの日のままで待っていた

 

先客が座っていたけれど

あの日そこは私の指定席

胸を高鳴らせていた私の指定席

 

胸に詰まらせた告白も

高鳴る鼓動にかき消されて

声になったかさえ覚えていない

 

叶わなかった恋

悲しいはずなのに

想いを胸の奥から飛び立たせた瞬間が

懐かしい椅子に座っている

| 木曜会(編集委員) | 00:05 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
ぼろぼろに

      滝波万理子

 

低気圧は私の所にめまいを連れてくる

今日の天気予報は台風だったから

頭痛と吐き気は半端じゃない

 

自分の周りが右から左に動いて

くらくらする

やっぱり来たか めまいの奴め

 

いつか病院で貰った薬の残りを

探してみるが見つからない

 

よろよろしている間に

窓の外は大風大雨になって

もう病院には行かれない

 

耐えていれば

そのうち治ると分かっていても

世の中から見捨てられた気がする

| 木曜会(編集委員) | 00:00 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
別れの花びら

      西脇たみ恵

 

言い訳なんかしないで

聞く耳は持ってないから

何を言われたって決心は変えない

言っても疲れるだけよ

 

黙って消えて

俯いているから

思案に暮れている訳じゃあない

忘れ方を思い出しているだけ

 

心の中はさようならで一杯

いつ切り出そうか

頃合いを計る時計が無い

いつ切り出そうか

 

もう二度と会いたくないけれど

風に流れる花びらのように

切ないくらい美しい

さようならを残したい

| 木曜会(編集委員) | 00:04 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
無事に育って‼

       尾崎 杏子

 

カルガモの赤ちゃんが生まれて

毎朝の楽しみがふえた

 

だけど十三羽生まれた赤ちゃんが

三日目の朝には九羽になり

その次の日は三羽に

こんな衝撃も味わうことになる

 

今朝は無事かなとドキドキしながら

池のほとりで探していると

水面でカラスが羽を広げてバタバタ

赤ちゃんカモを掴んでいた

 

なす術もなくアッと叫ぶだけ

カラスも今は必死で子育てちゅう

これでバランスが取れているのだと

自分を慰める

| 木曜会(編集委員) | 00:00 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
初段

     宮中雲子

 

段なんかいらないと

毛筆で書くだけで満足と

気楽に書道を続けていたのに

昇段試験を受けるように薦められ

決心してからは

右腕が抜けるのではないかと思うほど

書きに書いた

 

結果に期待の持てないまま

提出した半切

 

それだけに

昇段の知らせは嬉しかった

 

二十年続けて

やっと獲得した初段

人様に言えるほどのものではなく

喜びは 胸の内でひそやかに

| 木曜会(編集委員) | 00:05 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
香りで会話

       瀬野啓子

 

朝 窓を開けると

艶やかな 緑の葉を隠すように

真白な枇杷が満開

 

まるで 雪が載っているように…

 

花は 甘い香りを放ち

うっとうしい梅雨の日を明るくしている

 

通り過ぎる人々は

甘い匂いですね!と

おはよう!の代わり

 

知っている人も 知らない人も

純白の花は 香りで

会話を つなげてくれる

| 木曜会(編集委員) | 00:00 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
ホロビッツが愛したピアノ

           尾崎 杏子

 

会場にはグランドピアノが一台

ホロヴィッツの愛器スタインウェイ

どんな経緯で海を渡り

ここに在るのだろう

 

一人の女性ピアニストの演奏で

クラッシックでは重厚な響きを

ジャズの演奏では

スパイスの効いた弾む音色を

軽やかに醸し出した

 

ホロヴィッツも

このピアノでジャズを

弾いたことがあっただろうか

| 木曜会(編集委員) | 00:04 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
もう少し歩く

      西脇たみ恵

 

さあ どっちだ

右の道も 左の道も

こっちだ こっちだと

尤もらしい顔付き

 

切り抜けたと思っても

次々に選択が迫って来る

のべつ幕無し まった無し

人生は岐路に満ち溢れた道だ

 

どっちを選んでも

間違いでもなければ 正解でもない

ただ 現実になるだけ

 

迷いにけりをつけながら

もう少し 歩こう

未だ知らない自分と

明日 会おう

| 木曜会(編集委員) | 00:06 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
CALENDAR
S M T W T F S
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031   
<< July 2019 >>
SELECTED ENTRIES
CATEGORIES
ARCHIVES
RECENT COMMENT
LINKS