ご馳走さま

       宮田滋子

 

「ご馳走さま」

これまでに どれほど口にしたろう

 

幼い時から躾けられる

食事を済ませての 作法のひと言

 

表す漢字も学んだけれど

これまで

字の持つ意味を 考えたことはなかった

 

「ごちそうさま」には

あれこれ食材を調達するために

走り回ってくれた人

その労をねぎらい

食事によって 体に力が満ちたことへの

感謝が込められているという 

 

 

*宮田滋子さんは2018127日ご逝去されました。

 お預かりしている作品がある限り、ここに掲載していき 

 ます。

 

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今日の失敗

           滝波万理子

 

宅配のお兄さんが示した個所に

スタンプ式のハンコを押す

最近インクが薄くなっているので

力を入れて押し パッと離す

 

んっ 一滴の赤インクも付いてない

一瞬うろたえるも 手元をみると

ハンコではなく ハンコケースの蓋を

押し付けていたらしい

 

改めて受領印を押しながら

ウフフと笑いが込みあげてくる

宅配のお兄さんもウフフフ

アハハハと笑いながら去って行った

 

ストレスの多い仕事らしいけど

私の失敗で ちょっとの()でも

和んでくれたのなら

うれしい

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ふる里の言葉

           尾崎 杏子

 

恥ずかしくて忘れたかった訛り

 

ふる里に根をおろし

言葉を取り繕ったりしない親友と

築地のお鮨屋で久しぶりの再会

 

おかまいなしに訛りの花が咲いてはこぼれた

干からびかけていた 私の訛りも

つられて心地よく するり するりと生き返る

 

「岡山の方ですね」と隣の席の老夫婦

「家内が岡山出身で・・・」と

訛りの花は見知らぬ人までまきこんで──

恥ずかしく思っていたふる里の言葉なのに

胸の奥までじんわり温めてくれた

 

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忘れた物

      西脇たみ恵

 

今日もまた

忘れ物をした

 

あれも忘れ これも忘れ

忘れる物がなくなっても

忘れるのだろうか

 

忘れ物をする度に

罪を犯したような罪悪感があった

それも懐かしい思い出に

なろうとしている

 

忘れた物は重荷だ

降ろしたところで罪ではない

軽くなったと喜ぶ境地には

未だ至っていないけれど

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時代後れ

        瀬野啓子

 

今年も

正月料理を並べた元旦

 

暮には

急に値上がりした材料を買い求め

時間と手間をかけて作る御節料理

 

見向きもしない若者は

一にも二にも肉料理だと言う

 

来年こそは 

お節料理は止めようと思うのだが 

長年続いた習慣

 

縁起物に弱い我家は

なかなか止められない

 

進む時代に追い付けず

新しい風の中で うろうろしている

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初釜で

      宮中雲子

 

初釜で味わう花びら餅

口に残るごぼうを噛みしめつつ

お茶を待つ

 

和服の娘さんの

袱紗さばきの美しいこと

見ていて うっとりする色気

 

茶席で客になるばかりでなく

若い頃 しっかり茶道を

嗜んでおけばよかった

 

これからでも遅くない

と思うものの

過ぎればまた すっかり忘れていて

 

お抹茶が運ばれる頃には

茶室の雰囲気にも馴れて

一端の茶人の如く 返すお辞儀

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花は笑顔

       西脇たみ恵

 

デイゴの木に デイゴの花が付き

サザンカの木に サザンカの花が開く

 

花には

親に似ない鬼っ子は 存在しない

花は咲く木を 間違えたりしない

 

狂おしいほどの暑い夏も

凍える程の寒い冬も

故郷の親元に帰るように

その花達にとっては待ち遠しい季節

 

花は咲くと嬉しそうに見える

母に出迎えて貰った時の

ただただ嬉しかった私が

懐かしく重なる

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お墓の引っ越し

        尾崎 杏子

 

夫の男兄弟 三人共に都会の大学へ行き

それぞれ家を持ち

誰一人 田舎へは帰らなかった

 

両親が亡くなると実家は空き家

放置するわけにはいかず 取り壊し

お墓も引っ越してもらうことに

 

引っ越すためにお墓で魂を抜く儀式をして

長男の家のお墓に遠路運び

今度は骨壺と位牌に入魂の儀式

 

兄弟夫婦 老骨に鞭打ってこの一年

実家へ何往復しただろう

みんな一応にほっと胸をなでおろした

 

魂を抜かれたり入れられたり

義父母は見知らぬ地のお墓で

一日も早く落ち着いて安らげますように

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皇居の上の月

       宮中雲子

 

暗く沈んだ皇居の森

その上に大きな丸い月

 

11階のビルの窓から見下ろす皇居

天皇交代というドラマが

近づいていなければ

こんなに関心の目を

向けなかったかもしれない

 

こちらの宴は

まだ続いているが

宮家の人々は

もうお休みだろうか

 

同じ人間ながら

立場によって異なる人の暮らし

 

大きな丸い月は

今の平安に支えられて

皇居の上にある

 

| 木曜会(編集委員) | 01:15 | comments(0) | - | ↑TOP
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一番乗りの初詣

        宮田滋子

 

社殿の前で 列の先頭で

午前零時を待つ

 

去りゆく年の背が 消えた瞬間

“明けまして おめでとうございます”

神主さんの厳かな一声(いっせい)

初詣開始

 

しっかり振り鳴らす鈴

おもむろに打つ柏手が

年頭の硬い空気をほぐす

 

願い事は

自分と家族の一年の健康

神様は 受けとめて下さると信じて

 

一番乗りの気分で仰ぐ寒空の冴えーー

| 木曜会(編集委員) | 01:13 | comments(0) | - | ↑TOP
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