リミット

      中原千津子

 

いつからか

いつのまにか

 

ものの限界 極限を

考えるようになった

 

当たり前か

歳をとってきたのだからね

 

愛しい人も 仔犬も だいじなものも

昨日 蒔いた種でさえ

見届けないで 終わるかもしれない

どんなに あがいたってね

 

それは

父が 母が 姑さんが

見せてくれた

 

近頃は

黙って わたしを追い越していく

身近な友だちが教えてくれる

 

 

 

 

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紫式部

    吉田房子

 

急に冷え込んできた

庭の片隅に

つつましく寄りそった

るり玉の集まり

 

その奥深い

高貴な色合い

手を触れるのを

ふと ためらう

 

秋空よりも

深く染められた

自然の宝石の優雅さ

 

紫式部

いい名前だね

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京都を満喫したような

          阿部美智代

 

京都の友人に 連れられ

表通りから 裏通り 細い路地を

あっちに曲り こっちに曲り

ようやくたどりついた 小さなお店

 

メニューは 定食ひとつのみ

握りに そうめんの小鉢 カレー鍋

食後は タピオカティー

なんだか 不思議なとりあわせだが

ひとつひとつが丁寧で おいしい

 

歳を重ねた 店の主人は

無口で無愛想で

けれど それもよかった

 

京都らしいものを

食べたわけではないが

京都を満喫したような気分になった

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すごい雨音

     片山洋

 

明け方 目が覚めたら

グワァーという

絶え間ない雨音

記録的短時間大雨情報が

出されていただけのことはある

一晩中こんなに降っていたのなら

赤城の山裾の町では

土砂災害が起きたかもしれない

 

ゲリラ豪雨は

温暖化に対する

地球の抗議の涙かもしれない

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私の癖

      渡辺寿美子

 

廊下を見る癖

ガラス戸をのぞく癖

 

もう 犬のサスケが逝って

三ヶ月が過ぎるのに

 

直らない 私の癖

 

私の視線の先には

何の気配もない

がらんとした廊下があるだけ

 

ああそうだったと

虚しい思いが

募るだけなのに

 

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月と少年

      北上太郎

 

月に話しかけていた 少年の日

おだんご供えなくてもいいねって

薄だけを 供えてた

 

たしかに 月は

兎に 餅を搗かせてたから

 

 月にロケットが打ち上げられても

 人が月の上を歩いても・・・

 

やっぱり 月は

兎に 餅を搗かせてる

 

満月を じっと見ていると

目が潤んでくる

少年の日のように

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母と

    渡辺真知子

 

母と話していると

いつの間にか

母の記憶の扉が開いて

私を招き入れる

 

終戦前の台湾での暮らし

部屋の間取り

庭木の様子

縁側に座る家族との語らい

 

今の記憶はおぼろげになり

私と暮らしていたことも

記憶から消えているのに

 

嬉しそうに話す

母の笑顔が消えないように

私もいつまでも

母の記憶の縁側に座り続ける

 

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数メートルの時間

        大楠 翠

 

最後まで生に執着する父の姿は

マラソンランナーの

ゴール手前の数メートル

ラストスパートに賭けるよう

 

父の最期を見届けたのを機に

時間に対する考えが変わった私

 

仮に時間を距離に換算できるとしたら

同じ数メートルを生きるにせよ

全力で駆け抜けるか否かは

人それぞれ

 

ならば私は今

この数メートルの時間を

懸命に生きたい

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小さくされても

        安井和美

 

昨年

思い切り ばさりと

ハサミを入れ

散髪後の頭みたいに

すっきりと

小さくまとめたヤブラン

 

刈りすぎて

今年は断念していた花が

ある日

指の長さほどの

小ぶりで可憐な藤色の花をつけた

 

小さくされても

諦めず

健気に素直に たくましく

今の自分の身の丈で咲いている

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母さん 咲きましたよ

         中原千津子

 

母さん 咲きましたよ

あなたの植えた 浜木綿の花が

裏庭の狭いところで 花も葉も

思い切り 拡げて

その豊かさに 戸惑っています

 

薄桃色の ゆりのような花弁は

少しうなだれて たおやか

いつも きりっとした母さんの

ちがった一面を

好みの花から 教えられた

 

あなたとは実母より

長い年月を一緒に暮らしましたね

ありがとう

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