梅雨のあいま

      中原千津子

 

飼い始めた仔犬のための 

あれこれを買いに 夫と出かけた

 

昔は難なく歩いた距離

バスで二つ目にあるショップ

 

梅雨のあいまの

思いがけない夏の日差し

来ないバス

 

夫のイライラが

わたしに押し寄せてきて

汗びっしょり

一人で来ればよかった

 

 

| 木曜会会員 | 00:04 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
梅仕事

    渡辺真知子

 

部屋中に

甘酸っぱい青梅の香り

 

黄色に熟したころが

梅仕事の始まり

 

夫が定年を迎えてから

好物の甘い梅漬を

二年がかりで会得した

 

せっかちな私に

丁寧に手を抜かずに と

梅は教えてくれる

 

二人でいる時間を思いながら

梅の教えに

時の熟成を重ねている

 

| 木曜会会員 | 00:03 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
気をつけてよ

       中尾寿満子

 

免許更新 バッチリ

後 三年頑張るよ

電話の声も明るい 久ちゃん八十四歳

 

「とうさんが運転止めたので

わたしが動かんと 畠が泣くんでね

玉葱二千本植えたので

待っとりんさいよ

 

とうさんの病院行きの送迎

仲よし四人での

骨休め温泉行きの運転手もするで」と

久ちゃんの石見弁は弾む

 

免許を持たない 私は

「気をつけてよ」と

返すだけ

 

 

| 木曜会会員 | 00:02 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
自分に問う

      片山洋

 

歳をとってきて

時に自分に問う

お前は

人に対して

誠意を持って接してきたか

人の役に立ってきたか と

 

亡き両親に

そのように問われているような気がするからだ

両親はそのようなことを

口にする人ではなかったけれど

 

自信を持って「はい」とは言えないが

「なんとか」となら言えそう

 

だから両親の遺影の前で

これからもそのように

精一杯努めますと拝む

| 木曜会会員 | 00:01 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
夏山へと・・・

       黒澤弓子

 

春に芽生えた

新芽の柔らかな 若草色から

ちょっとずつ

ちょっとずつ

雨の後には鮮やかな緑色に

太陽の日差しを浴びて

もっともっと 深い緑色に

 

まるで

絵の具を塗り重ねてゆくように

夏の絵筆が

逞しい山を つくり上げる

| 木曜会会員 | 00:00 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
誓い

    北上太郎

 

どんなに苦労しても

その素振りを見せないで

うたおう

 

損にも得にもならなくていい

毒にも薬にも

ならなくてもいい

 

日常を

素直な気持ちで

然り気なく

 

それでいて ふと

どこかで誰かとめぐり合い

響き合っているような

 

そんな願いを込めて

今年も

うたい続けよう

| 木曜会会員 | 00:05 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
スズランの花に

        澤井克子

 

新宿御苑で

おもいがけず

スズランの花が売られていた

 

田舎から転校した少女時代

別れがつらかった友との手紙に

お互い必ず画いたスズランの花

 

夢中で読んだ少女小説の中の

主人公が好きな花だった

 

ご無沙汰してる友達に

スズランの花を画いて送ってあげようか

| 木曜会会員 | 00:04 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
マンションの鍵

         吉田房子

 

嫁からあずかった マンションの鍵

お使いに出て なくしてしまった

 

嫁に何と言おうか

気落ちして帰る道 ふと見ると

歩道橋の手すりに

ひもで つりさげられている

‟あっ マンションの鍵‟

 

誰が拾ってくれたのか

親切が身にしみて

カードに書いたお礼の言葉

同じ場所に

ひもでつりさげておく

 

| 木曜会会員 | 00:03 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
家事見習い

       大楠翠

 

あとどれだけ母と過ごせるか

無性に気になった

 

あと何回母の料理が食べられるのか

考えもした

 

「父に優しくできなかった分

 母に優しくなりたい」

 

きょうも黙って

家事見習いに徹する

 

家事見習いの胸中は

火にかけたのなか同様ふつふつと・・・

| 木曜会会員 | 00:01 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
ポストに一晩

        安井和美

 

夕方近く

今日のうちにと

手紙を手に急ぐ郵便ポストへ

 

投函して気づけば

翌日昼の取集(とりあつめ)らしい

 

不意に気になる

冷たく暗い夜を過ごす

ポストの底に

沈んでいる手紙

| 木曜会会員 | 00:00 | comments(0) | - | ↑TOP
bottom
CALENDAR
S M T W T F S
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031   
<< July 2019 >>
SELECTED ENTRIES
CATEGORIES
ARCHIVES
RECENT COMMENT
LINKS