悪い夢を見て

          渡辺寿美子

 

犬のサスケが

また

うなされている

 

おびえた悲しい声が

私の胸をつかむ

 

どんな恐ろしい所に行ったのだろうか

どんな怖い目にあってるのだろうか

 

助けを求めているのに

助けてやれない

 

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水油で手櫛が一番

            中尾寿満子

 

洗顔後 鏡に写った顔は

張りを失い

昨日の疲れを残したまま

 

髪の毛は艶を失い

毛先が勝手に 跳ねている

思わず 両手を水で濡らし

髪の毛を 押さえた

 

「水油で手櫛が一番」と

寝ぐせを直してくれていた

母の声を想い出し

ゆっくり手櫛で髪を整える

 

一歩 一歩登って行く

八十歳の坂

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記憶の形見

          安井和美

 

拝むだけになっていた

祖母のお仏壇

 

数年の時を経て

引き出しの中で見つけたものは

祖母の旅立ちより

三十年前に逝った祖父の葬儀写真

 

日ごと眺めては

思い出していたのだろうか

背中を丸めて

静かにうつむき見つめる姿が

目に浮かぶ

 

引き出しの中で

そっと刻まれ続けていた追慕

祖母の記憶の形見

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こんにゃくの花が咲いて

                 吉田房子

 

前の畑のこんにゃくの木に

何十年ぶりかで花が咲いた

 

太い茎で茶色

水芭蕉のように 上に伸びて

ラッパのような苞

大きなろうそくの形

 

こんにゃくの根は今まで球根だった

球根にこんにゃく玉が付いて殖えた

これで枯れるかと思ったら

囲りに小さいこんにゃくの木が生えた

あの花に種が出来てこぼれたらしい

おかしな木だよ

 

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     三輪アイ子

 

夏に毎年行く

観音先の海

老いた夫は

今年は行かないと言う

 

海に行けないということは

人生の終わりのように

淋しい

 

私は一人でも行きます

白い灯台が 私を

待っているから・・・

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音楽の不思議

            片山洋

 

モーツァルトのバイオリン協奏曲や

フルート協奏曲

軽やかなメロディーで

モーツァルトが

楽しいでしょう

楽しいでしょうと

語りかけてくる

 

そう

楽しい以外の何もない

脳のどこかの神経回路が

モーツァルトのメロディーに

共鳴しだすのだろう

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「る」と「り」の連絡

         澤井克子

 

別に住む娘から

「あー」でも 「うー」でもいいから

連絡するようにと言われた

 

携帯で朝だけ

お早うの後に

るんるん元気なりの印で

「る」とだけ送った

 

娘は意味を理解した後に

了解の「り」とだけ返信がきた

 

毎日 朝晩

用のある時以外

私からは 「る」だけで

娘からは「り」になり

暗号みたいな安心の言葉になった

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びわ

     三輪アイ子

 

一緒に童謡を歌っている友達が

庭のびわをもぎにやってきた

竹ざおの先の鎌を

上手に使いわけて

ひとつ口に入れては

「あまーいっ」と

少女のように

はしゃいでいる

 

うっとうしかった私の心が

梅雨の晴れ間のように

明るくなった

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あぶろく

       吉田房子

 

いきがい大学で

あぷろくという うすい冊子が

季刊誌として 配られている

 

読者の欄に

詩の投稿したら

毎回私の詩を出してくれている

 

あぷろくの意味がわからなくて

辞書を引いたが 出ていない

 

ある時 娘に 

あぷろくの意味を聞いたら

それは六十歳以上という意味 という

 

良く見たら その表紙に小さく

60 and  upと 書いてあった

なるほど 新しい言葉の意味

娘に教わった

 

 

 

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柿の若葉

      黒澤弓子

 

柿の葉には

何とも言えない透明感と

みずみずしい艶がある

 

それを教えてくれたのは 母だった

以来 母が いなくなった今も

指を差してくれているように

目に 飛び込んでくる

「ほら そこに」

「あっ あそこにも」と

| 木曜会会員 | 00:02 | comments(0) | - | ↑TOP
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