蒼の叫び

      大野悦子

 

三歳の蒼はぬり絵の手をとめて

不意に何かを思い出したように

「カンキ カンキ カンキ」と

立ち上がった

あっけにとられていると

リビングの大きな窓ガラスを開けた

届かない小窓は

いすによじ登って

 

叫び声は

「開ける」という動作から

文字が浮かび上がった

コロナウイルス感染予防の「換気」だ

幼い心にも

普段と違う空気が伝わるのか・・・

もう

何日も幼稚園は休んでいる

 

五月にしては

肌寒い風を感じながら

ドラえもんの続きをぬり始めた

 

 

     インターネット木曜手帖

     令和二年六月

 

*コメント     宮中雲子

 こんな小さい人にも、コロナは強く

影響を与えているのですね。

何日も幼稚園は休んでいる  では、

蒼ちゃんが休んでいるみたいですよ。

そこで、休みが続いている  としました。

 

2節から、3節へのところ、何か欲しくて

少し言葉を補ってみました。

言葉を補ったところ、次に書いてみました。

 

もう何日も

幼稚園は休みが続いている

 

窓を開け放って

安心したのか

五月にしては

肌寒い風を感じながら

蒼はドラえもんの続きをぬり始めた

 

| 木曜会会員(コメント) | 17:20 | comments(0) | - | ↑TOP
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懸賞品が届いた

                 大野悦子

 

宅配便の荷物には

間違いなく私の名まえがあった

 

包みを解いてゆくと・・・

くじ運のない私に

当選のお知らせと一等賞の賞品が届いた

懸賞に応募したことさえ

すっかり忘れていたから驚いた

 

まるで炊飯器と同じデザイン

ふたを開けるとお釜がある

その中に食材と調味料を入れるだけで

おいしい料理が出来上がるという

 

さっそく試してみた

味見も火加減もお任せで

サバの味噌煮が二〇分ほどで出来上がった

悔しいけれど

私のそれよりもおいしい

 

 お釜の何が起きていたのだろう

 のぞいてみたい不思議で仕方がない

 

一等賞のおかげで

世界の料理が食卓に並ぶでしょう

 

       インターネット木曜手帖

       令和二年五月

 

*コメント  宮中雲子

 一等賞お目出とうございます。

このテーマは、商品が届いたということでしょうか。

ちょっと疑問に思い「一等賞のおかげで」にしました。

このほうが印象が強いと思います。

2節の3行目は商品が届いたことは、1節でもう

分かっていますので、「届いた」はカットしましょう。

筋が通って、よくわかりますが、どちらかというと

散文的なのが気になります。

それに、結びが弱いですね。という次第で5節と6節を

やりなおしました。

「商品が届いた」ということと、「一等賞のおかげで」

と、二つに分かれていますね。どちらか一つに絞ることが大切です。

 

 

一等賞のおかげで

          大野悦子

 

宅配便の荷物には

間違いなく私の名まえがあった

 

包みを解いてゆくと・・・

くじ運のない私に

当選のお知らせと一等賞の賞品

懸賞に応募したことさえ

すっかり忘れていたから驚いた

 

まるで炊飯器と同じデザイン

ふたを開けるとお釜がある

その中に食材と調味料を入れるだけで

おいしい料理が出来上がるという

 

さっそく試してみた

味見も火加減もお任せで

サバの味噌煮が二〇分ほどで出来上がった

悔しいけれど

私のそれよりもおいしい

 

一等賞のおかげで

思い浮かべる料理のメニユーが

一気に広がる

 

| 木曜会会員(コメント) | 19:22 | comments(0) | - | ↑TOP
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バスの中から

       大野悦子

 

バスは赤信号で停車した

 

メロディーが鳴ると

歩行者はいっせいに

スクランブル交差点に繰り出した

杖を頼りに歩くおばあさんは

足早に歩く人々に追い越されても

動じない

歩いては立ち止まり

また

歩いては立ち止まる

歩行者信号が点滅を始めても

そのくり返し

 

手をつなぎたくなるような

おばあさんの歩みで

間に合うのだろうか・・・

 

つり革を持つ手に力が入った

 

バスは

おばあさんを見届けてから

ゆっくりと動き始めた

 

 

     インターネット木曜手帖

     令和二年四月

 

*コメント   宮中雲子

 やさしいまなざしが感じられて、いいですね。

大体いいのですが、メロディは鳴るというでしょうか。

ここは「メロディが流れ始めると」にしてはと思います。

いまひとつ、3節の「おばあさんの歩みで」という

ところ、「おばあさんの歩み」で区切ったほうが、

歯切れがいいですよ。

今回は、手を入れるところが少しなので、参考までに。

 

| 木曜会会員(コメント) | 20:54 | comments(0) | - | ↑TOP
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父の願い

       大野悦子

 

生家を壊すことになったとき

父だけは

ピアノを手放したくないと譲らなかった

しぶしぶ我が家の居間に引き取った

長い間置き物のようにそこにあった

今では

父の形見のようでどうすることもできない

 

ある日

遊びに来た孫がピアノに気がついた

低い音を鳴らして

ドシンドシンとぞうさんのまねをする

高い音をかき鳴らして

小鳥になって歌を歌う

けん盤をたたきながら楽しそう

 

ピアノが喜んでいる

何十年ぶりにピアノの笑い声を聞いた

 

父の嬉しそうな顔も浮かんだ

 

インターネット木曜手帖

令和2年三月

 

*コメント     宮中雲子

 お父様が手放したくないとがんばられたピアノ。

よく書けていると思います。この詩で注意して

おきたいのは、”置物のように“と

“形見のように“と、”ように”が続けて

出てくることです。これを避ける工夫を

してありますので見てください。

 ピアノはずっとそこにあるので、”ずっと

居間にある“と現在形にしましよう。

“ピアノの笑い声“は、気持ちとしては

わかりますが、もう少し抑えた表現にしても

いいかと思います。

 

父の願い           

      大野悦子

 

生家を壊すことになったとき

父だけは

ピアノを手放したくないと譲らなかった

 

しぶしぶ我が家に引き取ったが

長い間 置き物然とそこにあるピアノ

今では

父の形見のようでどうすることもできない

 

ある日

遊びに来た孫がピアノに気がついた

低い音を鳴らして

ドシンドシンとぞうさんのまねをする

高い音をかき鳴らして

小鳥になって歌を歌う

けん盤をたたきながら楽しそう

 

ピアノが喜んでいる

何十年ぶりに聞いたピアノの弾んだ音

 

父の嬉しそうな顔も浮かんだ

 

               

| 木曜会会員(コメント) | 02:27 | comments(0) | - | ↑TOP
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初めての車いす

        大野悦子

 

風邪をこじらせた私は

入院することになった

看護士さんは

病室まで歩こうとする私に車ぃすを薦めた

 

車いすに乗る日がくるとは

五つも十も

年をとったようで情けなかった・・・

 

看護士さんは車いすを押しながら

「お部屋は502号室をご用意しました」

ホテルの客室に案内されるようで

可笑しかった

談話室を通りかかったとき

「朝乃山の取り組みが近づくと

いつも談話室の大きなテレビ画面の前に

患者さんたちが集まって来られるちゃよ

富山出身の力士を応援するわいね」

 

看護士さんの富山弁の

力のこもった明るい声に

私も励まされたような気がした

 

 

      インターネット木曜手帖

      令和二年二月

 

*コメント   宮中雲子

 風邪こわいですね。今年はウイルスが

世界的に広がって、マスクを離すことが

出来ません。

作品よくかけています。うたい出し、

「風邪をこじらせた私は」とありますが、

私はなくても分かります。ここは「風邪を

こじらせ入院」でいいですよ。

「車いすに乗る日が来るとは・・・

とたんに 十も年を取ったようで

情けなかった」でいかがでしょうか。

「・・・」も、より効果的な使い方を

工夫しましょう。

看護師さんの言葉もうまく取り入れられて

いますね。

 

 

初めての車いす           

        大野悦子

 

風邪をこじらせて

入院することになった

看護士さんは

病室まで歩こうとする私に車ぃすを薦めた

 

車いすに乗る日がくるとは・・・

とたんに 十も年を取ったようで

情けなかった

 

看護士さんは車いすを押しながら

「お部屋は502号室をご用意しました」

ホテルの客室に案内されるようで

可笑しかった

談話室を通りかかったとき

「朝乃山の取り組みが近づくと

いつも談話室の大きなテレビ画面の前に

患者さんたちが集まって来られるちゃよ

富山出身の力士を応援するわいね」

 

看護士さんの富山弁の

力のこもった明るい声に

私も励まされたような気がした

 

 

 

| 木曜会会員(コメント) | 10:03 | comments(0) | - | ↑TOP
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ボクの夢

         大野悦子 

 

お正月に

遊びに来ていた孫の蒼にせがまれて

電車を見に出かけた

 

カンカンカンカン・・・

けたたましくなる警報機の音をまねて

通過列車を待っていると

特急電車が目の前を走り去った

吹き飛ばされそうな速さに

孫は私にしがみついた

 

「バイバイ バイバイ・・」

電車が見えなくなるまで手を振った

 

あおちゃん

電車のうんてんしゅさんになりたい

 

特急電車が夢を運んできた

 

令和二年一月

 

*コメント    宮中雲子

 新しい年、初の投稿ですね。

新年にふさわしい、夢を運んだ詩

いいですね。

孫の蒼…とあり、あおちゃんとでて

くるのですが、一般の読者にとっては

孫だけの方がわかりやすいかと思います。

「警報機の音をまねて」は、まねながらに、

あおちゃんは、ボクにしました。そのほうが

題の「ボクの夢」にも一致すると思います。

 

ボクの夢              

             大野悦子 

 

お正月に

遊びに来ていた孫にせがまれて

電車を見に出かけた

 

カンカンカンカン・・・

けたたましくなる警報機の音をまねながら

通過列車を待っていると

特急電車が目の前を走り去った

吹き飛ばされそうな速さに

孫は私にしがみついた

 

「バイバイ バイバイ・・」

そのスピードに憧れの目を向け

電車が見えなくなるまで手を振った孫

 

「ボク

電車のうんてんしゅさんになりたい」

 

特急電車が夢を運んできた

 

 

 

| 木曜会会員(コメント) | 21:22 | comments(0) | - | ↑TOP
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定期券

      大野悦子

 

夕方の駅の構内

私とマスクをかけたおじいさんは

高校生のズボンのポケットから

何かが落ちたのを見た

おじいさんは拾って

「おーい おーい」と呼んだ

私はおじいさんから受け取って

急いで届けた

 

「ボクの定期券・・・」と

お礼を言いかけた笑顔に

マスクのおじいさんが

拾ってくれたことを伝えると

高校生は

おじいさんのもとへ走って行った

 

定期券は

ズボンのポケットに帰ることができて

喜んでいる

やさしい心の持ち主も

喜んでいる

 

今日だけは

満員電車の憂鬱を忘れた

 

         インターネット木曜手帖

         令和元年十二月

 

 

*コメント         宮中雲子

令和元年の最後の公開作品になりましたね。

よく書き続けてくださって嬉しいです。

タイトル「定期券」だけでは、そっけないので

「嬉しい定期券」としてみました。

駅構内の出来事ですので、その後著者が満員電車に

乗るところまでは、持って行かないほうが、定期券の

受け渡しが、鮮明に浮かび上がってくると思います。

 

 

嬉しい定期券

                        大野悦子

 

夕方の駅の構内

高校生が ズボンのポケットから

何かを落したまま行ってしまった

近くにいたおじいさんは拾って

「おーい おーい 定期券」

と叫んだ

見ていた私は 

おじいさんから受け取って

急いで追いかけた

 

「ボクの定期券・・・」と

お礼を言いかけた笑顔に

私は 

「拾ったのはあのおじいさん」

と 伝えた

高校生は

おじいさんのもとへ走って行った

 

定期券は

ズボンのポケットに帰ることができて

喜んでいるだろう

| 木曜会会員(コメント) | 11:01 | comments(0) | - | ↑TOP
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ボクのおとうさん

         大野悦子

 

ボクは

アンカーで走るおとうさんを

応援席で待っていた

 

アンカーの青いタスキが近づいてきた

ボクは

おとうさんに手を振った

「パパー パパー」と

さけびながら

 

日曜日に焼きそばをこしらえている顔とは

ちがう顔で

目の前を駆け抜けていった

 

住民運動会最後のプログラム

町内対抗リレーで

三人も追い越して優勝したおとうさん

ボクは大好きだ

しょうらい

おとうさんのようになりたいな・・・

 

 

      インターネット木読手帖

          令和元年11月

 

 

 

*コメント  宮中雲子

 運動会をテーマに。タイムリーでいいですね。

お父さんにしっかり視点が向けられているのが

見事です。

1節、「ぼくは」と「応援席で待っている」の間

1行空かないほうがいいと思います。

2節は二つに分け、おとうさんを加えました。

「日曜日に焼きそばをこしらえている顔とは

 ちがう顔で」

ここもいいですよ。

結びは、もう少し工夫してほしいので

手をいれてみました。

 

 

ボクのおとうさん

 

         大野悦子

 

アンカーで走るおとうさんを

ボクは

応援席で待っていた

 

アンカーの青いタスキが近づいてきた

ボクは

「パパー パパー」と

さけびながらおとうさんに手を振った

 

おとうさんは

日曜日に焼きそばをこしらえている顔とは

ちがう顔で

目の前を駆け抜けていった

 

住民運動会最後のプログラム

町内対抗リレーで

三人も追い越して優勝したおとうさん

 

ボクの自慢のおとうさん

しょうらい

ボクもおとうさんのようになりたいな

| 木曜会会員(コメント) | 15:02 | comments(0) | - | ↑TOP
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塩屋さんへ

             大野悦子

 

あなたで五人目です

若くして

私にさよならをしたのは

 

結婚したのも

男の子が生まれたのも同じころでした

大泉公園の砂場で

毎日のように顔を会わせましたね

あなたのおかげで

ひとりぼっちの子育てじゃなかったから

楽しかった思い出ばかりです

 

折り紙が得意だったあなた

どんな小さな紙からでも折り鶴が生まれました

夢中になり過ぎて

ママを呼ぶ声に気がついたときの

あなたの照れ笑いが浮かんできます

 

三十年後に

永遠の別れが訪れるなんて

若かったあの頃は

思いもしませんでした

両親でさえ

いつまでも生きていると信じていましたから

 

ありがとう

信ちゃんのママ          

 

                インターネット木曜手帖

        令和元年10月

 

*コメント          宮中雲子

 いつもいろいろな題材をさがしていらして、次は

何かと楽しみにしています。あなた独自の発想や展開も

いいですよ。休まないのが何よりいいのです。

 

 どんな別れも辛いものですが、親しい人に若くして

亡くなられるのは、やり切れませんね。

初め、あなたで五人目です・・・とありましたが

他のことはなるべく省いて、塩屋さんに集中しましょう。

両親を省いたのもおんなじ理由です。

三節目、この時の塩屋さんの描写がいいですよ。

結びは,ありがとう信ちゃんのママでは,信ちゃんが

いきなりで、戸惑います。そこで、

塩屋さん 信ちゃんのママとしました。

 

 

塩谷さんへ               

         大野悦子

 

若くして

私にさよならをした塩屋さん

 

結婚したのも

男の子が生まれたのも同じころでした

大泉公園の砂場で

毎日のように顔を会わせましたね

あなたのおかげで

ひとりぼっちの子育てじゃなかった

楽しかった思い出も沢山あって・・・

 

折り紙が得意だったあなた

どんな小さな紙からでも折り鶴が生まれました

夢中になり過ぎて

ママを呼ぶ声に気がついたときの

あなたの照れ笑いが浮かんできます

 

三十年後に

永遠の別れが訪れるなんて

若かったあの頃は

思いもしませんでした

 

ありがとう

塩屋さん

信ちゃんのママ          

 

| 木曜会会員(コメント) | 17:49 | comments(0) | - | ↑TOP
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母の指輪

      大野悦子

 

母が残していった指輪

私の指には小さすぎて

 

「ゆびわ ゆびわ ゆびわ・・・」

迷子になった子犬の名を呼ぶように

這いつくばって探しまわっていた母

「ただいま」の声にも気がつかないで

それでも

夕餉の食卓が待っているから

かくれんぼを

しぶしぶおしまいにした

母の指から

するりと逃げだした指輪

隠れ場所は

里芋の煮っころがしの鍋の底

母とふたり

涙がでるほど笑った

 

鍋の底に見つけた

私には小さすぎる指輪

 

今は

私の胸で揺れている

              インターネット木曜手帖

              令和元年七月

 

*コメント   最初に「母が残していった指輪

私の指には小さすぎて」とありますが

この部分はないほうがいいと思います。

 

母の指輪                     

       大野悦子

 

「ゆびわ ゆびわ ゆびわ・・・」

迷子になった子犬の名を呼ぶように

這いつくばって探しまわっていた母

「ただいま」の声にも気がつかないで

それでも

夕餉の支度が待っているから

指輪探しは

しぶしぶおしまいにした

 

母の指から

するりと逃げだした指輪

隠れ場所は

里芋の煮っころがしの鍋の底

見つけた母と私

涙がでるほど笑った

 

母の残していった指輪

私には小さすぎる指輪

 

今は

私の胸で揺れている

 

終わりの部分

「鍋の底に見つけた 私には小さすぎる指輪」

とすると、鍋の底に見つけた…がダブりますので

ここに「母の残した指輪」を持ってきました。

                宮中雲子

                     

| 木曜会会員(コメント) | 19:42 | comments(0) | - | ↑TOP
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