大野悦子
日曜日の朝早く
ご近所さんから頂いた採れたての大根
料理好きの夫が
夕飯のメニューに「ブリ大根」を選んだ
料理本に忠実な夫は
ブリのあらと乱切りにした大根を
大きめの鍋に仕込んだ
若いときなら
夫が鍋に仕込んだ瞬間
鍋でひともんちゃくあった
私が育った家には魚専用の鍋があった
それが当たり前だったせいか
「魚は魚専用の鍋を使ってほしい」と
私は譲らなかった
夫は聞こえないふりをして知らん顔
四十年あまりの結婚生活
いつしか
私は
どの鍋で魚料理が始まってもおかまいなしだ
台所で
キッチンタイマーが鳴った
インタネット木曜手帖
令和五年十二月
*コメント 宮中雲子
家庭生活の一齣をうまく切り取ってうたっておいでです。
鍋でひともんちゃくあった・・・で一区切りしましょう。
魚にはそれ専用の鍋を使ってほしい・・・というところ、
言っているのは私とわかりますので、私はカット。
今では、どの鍋で魚料理が始まってもおかまいなしだ・・・は
おかまいなしに・・・に。更に、結びに何か欲しいので一行加え
ました。
鍋の話
大野悦子
日曜日の朝早く
ご近所さんから頂いた採れたての大根
料理好きの夫が
夕飯のメニューに「ブリ大根」を選んだ
料理本に忠実な夫は
ブリのあらと乱切りにした大根を
大きめの鍋に仕込んだ
若いときなら
夫が鍋に仕込んだ瞬間
鍋でひともんちゃくあった
私が育った家には魚専用の鍋があった
それが当たり前だったせいか
「魚は魚専用の鍋を使ってほしい」と
譲らなかった
夫は聞こえないふりをして知らん顔
四十年あまりの結婚生活
いつしか
私は
どの鍋で魚料理が始まってもおかまいなしに
台所でキッチンタイマーが鳴った
平穏な暮らしがなにより