木曜手帖は平成18年6月発行600号で終刊となりましたが、新しく「インターネット木曜手帖」として、インターネット(ブログ)にて継続していきます。参加ご希望の方はこちらで詳細をご確認ください。
宮中雲子
あちこち緑青が浮き出している
銅の胡桃割り
いかにも年代物といいたいが
父の代からのもの
もっぱら銀杏割に用いていたが
胡桃をもらって
割ることに
銀杏の殻にくらべ
その殻の硬いこと
思いがけない力を要する
次世代への命を抱いているのは
銀杏も同じだが
他を拒む力は
胡桃の方が遥かに強い
父が胡桃を割る姿を見たことはない
胡桃を割る本懐を
私の手でと 利き手に力を込める