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ヒヤシンス

        岩原陽子

 

薄紫のヒヤシンスが

ずっとわたしの背後にいた

 

古い洋室のテーブルの上で

わたしが弾くバイオリンの音に耳を傾けて

 

石油ストーブの火が

チロチロと燃え

ヒヤシンスの香りが

部屋に漂う

 

幾度となく繰り返される旋律を

ヒヤシンスは

居ずまいを正し

注意深く

ただ聴いていた

 

ひりひりとした焦燥感を抱え

ヴァイオリンを弾き続けていた

あの懐かしく愛おしい時間

ヒヤシンスは

たったひとりの証人として

そこにいた

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